パランティア・テクノロジーズ(Palantir Technologies、PLTR)の最高技術責任者(CTO)、シャム・サンカー(Shyam Sankar)氏は10月11日、米CBSの報道番組「フェイス・ザ・ネーション」で、イラン南部ミナブの小学校に対する米軍ミサイル攻撃をめぐる報道について反論した。同社のAI基盤「Maven」への過度な依存を誤爆の要因の一つとして報じたブルームバーグの記事について、サンカー氏は「不正確だ」と述べた。その一方で、原因については「おそらく人為的ミスだ」との見解を示し、最終的な調査報告を待つべきだとも語った。(番組の動画)
発言のポイント
サンカー氏は、イラン戦争でのAIの役割を問われ、一般論として、1日1,000回の攻撃の計画は以前なら50人で2週間かかったが、今は1人で4時間でできると説明した。ただし、「AIが標的を選んでいるわけではない」とも強調した。
ブルームバーグの報道をめぐっては、「最終報告を待つべきだ」と前置きしたうえで、「あの報道は不正確だとは言える」と述べた。誤爆の原因については、「おそらく人為的ミスだ」とした。
また同氏は、誤爆後に「確認をさらに行うAIエージェントを追加で作った」と説明した。パランティアが担当しない工程だったが、事態の緊急性に応じて対応したという。
下院民主党議員120人以上がMavenの役割を問う書簡を国防長官に送ったことを挙げられると、「議会には説明済みで、議会はMavenの能力をよく理解している」と答えた。議会にリスクも説明すべきかと重ねて問われると、「残念ながら私は一技術者にすぎない。政策の問題は他の人に任せる」と述べ、政策判断そのものには踏み込まなかった。
背景:未公表の国防総省調査
ミナブの小学校は2月28日、対イラン攻撃の初日に米軍の巡航ミサイル「トマホーク」2発を受けた。ブルームバーグは9月、国防総省の内部調査に関わる当局者の話として、誤爆は「防げたはずの失敗の連鎖」だったと報じた。同報道は、学校敷地が古い情報のまま革命防衛隊の施設として登録されていたこと、民間人被害を抑える中央軍のチームが縮小されていたこと、攻撃直前の目標確定が急がれていたこと、一部要員によるMavenへの過度な依存などを要因として挙げた。
国連の独立調査団は2026年9月17日、ミナブの小学校への攻撃と同日のもう1件の米軍の攻撃について、戦争犯罪に当たると判断する合理的な根拠があるとの見解を発表した。
3月に開始された国防総省による包括的な調査の報告書は、数カ月前から事実上完成しているものの、公表されていない。米国は攻撃の責任を公式には認めておらず、トランプ大統領はこれまでに、イラン側に責任があるとの見方を示唆していた。
パランティアの広報はブルームバーグに対し、「基礎となるデータや情報の不備を見つける責任は負わない」とし、ミナブでの攻撃において同社のソフトウェアに落ち度があったことを示す証拠はないと回答した。同社は誤爆の後、標的として不適格な要因を洗い直す機能をMavenに加えたという。サンカー氏の番組での説明も、これに沿う内容だ。
その他の発言
Anthropic排除は「影響なし」
トランプ大統領は2月末、安全上の制限をめぐって国防総省と対立したAI開発企業Anthropicとの取引をやめるよう政府に命じた。国防総省はその後、同社製品の使用をやめた。MavenにもAnthropicのAI「Claude」が組み込まれていた。影響を問われたサンカー氏は「すでに置き換え済みだ」「影響はない」と答えた。どのモデルを使うかを自ら選べることが組織の主権であり、その考え方が同社の商業部門の成長を支えているとも語った。
ロイターは3月、Mavenの一部のプロンプトなどはClaudeを使って作られており、置き換えには作り直しが必要だと報じていた。
陸軍予備役と利益相反
サンカー氏は2025年6月、IT企業の幹部を受け入れる陸軍の新設部隊で予備役中佐に任官した。企業幹部が軍務に就くことの利益相反を問われると、「国防総省の弁護士が慎重に管理している。利益相反のない案件しか担当できない」と答えた。陸軍は同年7月、パランティアと最大100億ドル(約1兆5,800億円)、10年間の契約を結んでいる。
AIへの不安と「効果的利他主義」
CBSの世論調査では、AIは解決するより多くの問題を生むと答えた人が50%に上った。サンカー氏は、AIの利点を示す責任は業界にあると認めたうえで、AIの安全をめぐる議論の背後には「効果的利他主義(EA)」があると主張し、EAを「千年王国的な終末カルト」と批判した。
規制については、食品医薬品局(FDA)や運輸省など既存の省庁が、AIの用途ごとに規制すべきだとした。9月29日にホワイトハウスで主要AI企業が署名した安全に関する合意に、パランティアは加わっていない。理由は「モデルを作る企業向けの合意だった」からだと説明した。
市場・事業への含意
パランティアの2026年4〜6月期の米政府向け売上高は8億900万ドル(約1,278億円)で、前年同期比90%増となった。Mavenは同社の政府向け事業の代表的な製品だ。
Mavenの契約上限は2025年5月に約13億ドル(約2,054億円)へ引き上げられ、国防総省の高官によると、利用者は1月の約5万人から10万人超に増えた。
一方、ブルームバーグによると、ヘグセス国防長官の側近の一部は、Mavenへの政治的な監視が導入拡大を妨げることを懸念している。誤爆をめぐる最終報告の公表や議会の追及が進めば、防衛AI調達の環境やMavenの拡張ペースに影響する可能性がある。ただし現時点で、公式な調査結果や確定的な業績影響は示されていない。




