日曜日, 3月 29, 2026
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ワシントンは動き始めている?——議員取引が示す“株→債券”シフト

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今週は、上院で3名、下院で8名の議員がStock法に基づく最新の取引状況を開示した。そのうち主だった取引を見ると、大型テック株を手放し、国債・地方債・クレジット系ファンドへと資金を移す——「株から債券へ」という流れがみられる。

9銘柄をまとめて手放した無所属上院議員

まず目を引くのは、アンガス・キング上院議員(無所属・メイン州、民主党会派)の動きだ。3月24日付の開示報告書には、配偶者名義による9銘柄の売却が記載されていた。

メタ・プラットフォームズ、マイクロソフト、ネットフリックス、ウーバー、ペイパル、オン・ホールディング、イーライリリー、ブラックストーン、オートデスク。大型テクノロジーを中心に、製薬・金融・スポーツアパレルにまたがる幅広い構成だ。各取引の金額レンジはいずれも1,001ドルから15,000ドルと小口だが、9銘柄すべてが「売り」である点は注目に値する。

キング議員は上院軍事委員会、上院情報特別委員会、エネルギー・天然資源委員会の委員を兼務している。テック規制・安全保障の最前線にいる議員が“広く・まとめて・売却した”という点は、単なるリバランス以上に、「テック全体のエクスポージャーを落とした」という含意を持つ可能性もある。

特集コーナー

短期債を売り、長期クレジットへ——ビッグス議員の「乗り換え」

ポートフォリオの組み替えとして興味深いのが、シェリ・ビッグス下院議員(共和党・サウスカロライナ州)の取引だ。3月21日付の開示には、満期の近い米国短期債2銘柄を売却する一方、2036年満期の長期国債を購入し、さらに非公開市場の利回り追求型ファンドに資金を振り向けたことが記載されている。満期を延ばしながら利回りを取りにいく構成とも読める。民主党のスティーブ・コーエン下院議員(テネシー州)も同じ週、2026年8月満期の米国短期国債を50万ドル超で購入した。党派は異なるが、株式市場の変動から距離を置きながら、「安全資産へ」という方向性は重なる。

マコーミック議員の「地元債」集中と、その時期

この週の開示のなかで、規模と複雑さで際立つのがデイビッド・マコーミック上院議員(共和党・ペンシルベニア州)だ。2度の報告書提出により、開示レンジ下限ベースの概算で400万ドル規模に及ぶ取引群が明らかになった。

取引の内訳は大きく二層に分かれる。第一層は配偶者名義による地方債とゴールドマン・サックス組成の仕組債だ。ペンシルベニア州ターンパイク委員会歳入債(2件)、ペンシルベニア州一般財源債、アッパーダブリン学区債、パークランド学区債——すべて自身の選挙区であるペンシルベニア州の公共インフラ関連債だ。加えてS&P500連動ノートを4件、MSCI EAFE連動ノート3件という仕組債もあわせて購入している。第二層は本人名義によるフィラデルフィア市上下水道歳入債(2054年満期)とアレゲニー郡空港局歳入債(2050年満期)という超長期の地元インフラ債だ。

マコーミック議員は昨年、トランプ大統領とともにペンシルベニア州を訪れ、エネルギーへの投資を発表している。地元経済へのエクスポージャーを高める構成とも読める。一方でブリッジウォーター・アソシエイツの元CEOという経歴を持つ議員が、地政学リスクが高まるなかで固定利回りの地元インフラ債を選んだという点が示唆に富んでいる。

なお、今回明らかになったマコーミック議員の地方債取得の多くは、開示データによれば2月20日から27日にかけて集中していた。米・イスラエルとイランの軍事衝突が始まったのは2月28日。時系列としては、衝突の直前にポジションが組まれていたことになる。

トランプの「1月ポートフォリオ」という補助線

議員たちの動きに一つの補助線を引くとすれば、トランプ大統領自身の1月の取引開示だ。ホワイトハウスが3月に公表した財務開示書類によると、1月の取引83件のうち80件が「購入」であり、その大半を社債・地方債・金融機関優先株が占めていた。AIインフラ(CoreWeave社債)、防衛(ボーイング社債)、金融規制緩和(銀行優先株の入れ替え)という政権の主要テーマと購入銘柄が重なる構成だ。

大統領はSTOCK法の適用外であり、この開示は倫理規則に基づく。ただ「同じ時期に、同じ方向に向かっている」という事実は、少なくとも、株式リスクを避けながら利回りを確保するという判断が、ワシントンのさまざまな立場の人間に共有されている可能性がある。

STOCK法は議員の株取引を禁じるものではなく、1,000ドルを超える取引を原則30日以内、遅くとも45日以内に報告することを義務付けている。今週の開示に登場する取引の多くは配偶者名義を含み、具体的な約定価格も非公開だ。確定的な結論を導くことはできない。ただし、市場ではなく、ワシントンが先にポジションを変えている可能性もある。小さな開示の積み重ねは、環境変化の前触れとして読むべきかもしれない。

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