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I♥NYロゴのデザイナー、ミルトン・グレイザーさん91歳で死去

アイ・ラブ・ニューヨークのロゴや、ボブ・ディランのポスター、ニューヨークマガジンの共同創刊者として知られるグラフィック・デザイナー、ミルトン・グレイザー(Milton Glaser)さんが26日、マンハッタンの自宅で死去した。この日はグレイザーさんの91歳の誕生日だった。ニューヨークタイムズによると、死因について家族は脳卒中だと語っている。

1977年、ニューヨーク州の旅行キャンペーンとして使用された「I♥NY」は、1975年のニューヨーク市の金融危機後にツアー客を呼び込むため、グレイザーさんにデザインが依頼された。ニューヨークマガジンによると、グレイザーさんは、愛する街とキャンペーンのために無料で引き受けたという。デザインは、タクシーに乗車していた際、破れた封筒の裏に赤いクレヨンでスケッチしたものだった。
ロゴは、マグカップやTシャツ、キーホルダーなどあらゆる製品となって街に溢れ、ニューヨークのシンボルとなった。同誌は、グレイザーさんはロゴが生み出す無数の組み合わせや、パロディ、模造品などを楽しんでいるようだったと述べている。
2001年の米同時多発テロ事件以降は、新たなバージョン「I ♥ NY More Than Ever」を制作した。

グレイザーさんは1929年6月26日、ブロンクスでユダヤ教の家庭に生まれた。両親はハンガリーの移民で、父親はドライクリーニングと仕立て屋を営み、母は専業主婦だった。

幼少の時に突如、鉛筆で生命を作り出すことができると気づき、絵を生涯の仕事にしようと決意したという。

クーパー・ユニオンを卒業後、ヴォーグマガジンのプロモーション部門で勤務。フルブライト奨学金を得て、イタリアのボローニャで絵画を学んだ。
帰国後、アートスクールの同級生3人と共に1954年、「プッシュ・ピン・スタジオズ」(Push Pin Studios)を設立し、プレジデントに就任。Shirley Girtonさんと1957年に結婚した。

1967年発売のボブ・ディランのアルバム「Bob Dylan’s Greatest Hits」は600万枚の大ヒットを記録。ニューヨークタイムズによると、同封されたグレイザーさんのサイケデリックなポスターは、同時代のカルチャーのシグニチャーとなったという。デザインは、マルセル・デュシャンの自画像のシルエットを借用したもの。ポスターや「I ♥ NY」のデザインが書かれた封筒は、MoMAの所蔵品となっている。

ニューヨークマガジンは一躍人気に

1968年4月、エスクァイアの編集者クレイ・フェルカー(Clay Felker)氏と共に週刊誌ニューヨークマガジンを創刊。ルパート・マードック氏が買収する1977年まで、プレジデント兼デザイン・ディレクターを務めた。ニューヨークマガジンによると、エスクァイアや独創的な作家を起用した雑誌は、グレイザーさんがデザインした「明瞭で分かりやすい、明るいポップなデザインにより、米国で最も人気かつ活発な雑誌」となった。

グレイザーさんは、ニューヨークマガジンで執筆も行っている。友人のJerome Snyder氏と共に、手頃な価格帯のエスニックグルメを紹介するコラム「The Underground Gourmet」を担当していた。
同誌は「今では当たり前のことだが、マイナーな革命」であり、「洗練された方法で、安いエスニックレストランを紹介する世界初のコラムニストの可能性が高い」と語っている。

1974年に自身のデザイン会社Milton Glaser Incを設立。1年後にはMoMAで個展を開催している。

1978年にはイギリス人の実業家ジェームズ・ゴールドスミス(James Goldsmith)氏に雇われ、同誌が買収したスーパー、グランド・ユニオンの内装や外装、パッケージをデザインした。

ワールドトレードセンターのフードコート「ビッグ・キッチン」(Big Kitchen)や、最上階のレストラン「ウィンドウ・オン・ザ・ワールド」(Windows on the World)、ロックフェラーセンターの「レインボー・ルーム」(Rainbow Room)などのデザインに携わった。

1980年代には、WHO(世界保健機関)のAIDSのロゴや、ブルックリン・ドジャースに着想を得たブルックリン・ブリューワリー(Brooklyn Brewery)のロゴ、トニー・クシュナーの戯曲を題材とした演劇「エンジェルス・イン・アメリカ」(Angels in America)のロゴ、スクーターのベスパ(Vespa)50周年記念ポスターや、ドラマ「マッドメン」のファイナルシーズンのポスターを手がけた。

「The Milton Glaser Poster Book 」(1977)や「Art Is Work」(2000)などの著書も出版。
また、スクール・オブ・ヴィジュアル・アーツで教鞭を執った。2008年にはドキュメンタリー映画「Milton Glaser: To Inform and Delight」が公開されている。

Milton Glaser: To Inform & Delight from kinolorber on Vimeo.

2004年にクーパー・ヒューイット・ナショナル・デザイン・ミュージアムより特別功労賞を、2009年にはグラフィックデザイナーとして初めて、芸術勲章文化勲章(National Medal of Arts)を授与された。

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