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認知症の40%はライフスタイルで予防可能 英医学誌

「ランセット認知症予防、介入、ケアに関する委員会(the Lancet Commission on dementia prevention, intervention and care)」はレポートで、生活習慣における12の要因を適切に対処すれば、世界中の認知症症例の最大40%を、遅れさせる、あるいは予防できる可能性があると発表した。ガーディアンが報じた。

現在、認知症の患者数は世界で5千万人に上る。治療法はないものの、認知症を引き起こすとされる要因の一部は過去の研究で明らかにされてきた。それらには、特有の遺伝子や民族的背景といった、変えられないものもあるが、多くはライフスタイルに関係するという。

レポートは、2017年に発表した研究結果を発展させた形で作成された。当時の研究では、生活習慣における9つの要因を適切に対処すれば、認知症症例のうち3分の1が予防可能だと報告していた。今回の研究では、主に高所得国における最新エビデンスを分析し、9つの要因に加えて「中年期における過剰飲酒」「中年期における頭部のケガ」「老年期における大気汚染曝露」の3つの影響が示された。

なお、過去の研究によって示された認知症発症リスクに繋がるとされる9つの要因は以下の通り。

  • 若年期:中等教育の未終了
  • 中年期:聴力低下、高血圧、肥満
  • 老年期:喫煙、うつ病、社会的孤立、糖尿病、運動不足

研究メンバーの一人、ユニバーシティ・ロンドン・カレッジ高齢者精神医学教授のGill Livingston氏は「提示された危険因子の中には、個人レベルで変更できるものと、政府主導で変更を促さなければならないものがある。」と話し、英首相のボリス・ジョンソン氏が発表した政策、「肥満対策キャンペーン(※)」を、人々が肥満の原因となる環境について意識するきっかけになるだろう、と評価した。

※新型コロナウイルス感染の一因だと考えられる肥満を防止するために、イギリス政府が公表した健康増進計画。午後9時以前のジャンクフードのテレビCMの禁止やサイクリングの推奨などが盛り込まれる。

同氏はまた、12の要因に完全に対処するのは難しく、40%は楽観的な数字としつつ、小さな一歩を踏み出すことで違いが出てくる可能性があると説明。ある研究によると、寿命の長期化に伴い、認知症人口が増加する一方、ヨーロッパと北米で、喫煙率の低下などの生活習慣の変化によって、発症率が過去30年間で、10年あたり約15%ずつ減少しているという。

Livingston氏はさらに、2050年までに認知症患者の約3分の2が低所得国の国民になるだろう予想を示し、生活習慣への介入は、貧しい人々や、低中所得の国家で大きな影響をもたらしうると語った。

研究には参加していないが、ニューキャッスル大学のFiona Matthews疫学教授は、生活習慣では「認知症症例の50%以下にしか影響を与えられない」と述べつつ、個人および社会的な取り組みは依然として重要だと見解を述べた。同氏は加えて、新型コロナウイルスで浮き彫りとなった健康格差に対処するべきだと語った。また、治療法がない状況では、リスクを減らすことで、高齢化にともなう認知症患者の増加を遅らせることが最良の方法だと述べた。

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